草花治療師の恋文
……バタバタバタ
(……騒がしいな…)
誰かの足音でライザは目を覚ました。
コンコンッ!
部屋の扉がノックされた。
「おはようございます、ライザ様!」
ノックをしたのは専属のクライツではなく、マーガレット専属のセイリンだ。
その声で、いつもより慌ただしい足音とノックの意味を察した。
「入れ。」
身体はすぐに起こすことはできないが、返事をしないとセイリンがもっと焦ると思ったので横になったまま入室を許可した。
「失礼いたします!」
セイリンは扉を開け、頭を下げて入ってきた。
そして頭を上げ、ライザのベッドを見て固まった。
「……驚かせて悪かった、セイリン。マーガレットを探していたのだろう?」
「…う…あ、はい…」
夜中にライザの部屋で意識を失ったマーガレットは、そのままライザに添い寝される形で朝を迎えていた。
しかし、マーガレット自身はまだ目を覚ましていないのでそんな状況である事は知らない。
「あの…すみません。失礼いたしました!」
そう言ってセイリンは退室しようとした。
「待ちなさいセイリン。私はもう起きるが、マーガレットはまだ無理だと思うから、部屋まで運んでくれないか?」
「え?マーガレット様にお声かけいたしましょうか?」
セイリンは、父親が起きているのに娘の自分がいつまでも寝ていたと知った時に、マーガレットがショックを受けると思った。
「いや、いい。ちょっと私の術をかけたから、もうしばらく休ませてあげて欲しいんだ。」
「…術ですか…。承知致しました。」
体調が悪くなってからは、治療師として直接施術することがなかったライザが、マーガレットに何かしらの術をかけた。
ライザ自身の体調も心配だが、ライザが無理をしてでもマーガレットに施術をした理由も気になった。
しかし、もちろん理由など聞くことはできない。
「それでは…失礼致します。」
「あぁ、よろしく頼むよ。」
セイリンはマーガレットを抱え、頭を下げて部屋を出て、扉が閉まった。
「ふー…」
ライザは1人になり、深い溜息をついた。
(さすがだな…。君の娘は鋭いよ…。)
天井を見上げしばらくして、ライザは身体を起こした。
久々に施術をしたので、身体が予想以上に重たかった。
しかし、数週間前なら施術など到底無理だった。
それができるようになったのはマーガレットの調薬と、夜中にこっそり行われていた施術のお陰である事がハッキリとわかった。
「…よし。負けてられないな。」
ライザはこの日から、テンペスト家当主の仕事に本格的に戻ることになった。