心の中を開く鍵
そして、何事も無かったかのように誰もいないエレベーターに乗り込み。

ドアが閉まると思いきり頭を抱えてしゃがみこんだ。

ビックリしたー! めっちゃめちゃビックリしたー!
なんなの、どうなの?
世間は狭いとはよく言うけれど、こんな高確率で、ピンポイントに再会するってアリなの?

さっきまで、翔梧の事を思い出していたよ。
ええ。確かに考えていた。もう三年も経つんだー。とか、普通に考えていたよ?

これはあれかな。第六感ってやつ? それとも女のカン?

超気まずかった。気まずいけれど……まぁ、お互いに大人になったよね。

溜め息をついてから立ち上がり、秘書課のある10階のボタンを押した。

まさか、こんなところで会うとは考えたこともないけれど、もう三年も前の話なんだし、こんなものだよね。

終わったことだよ、終わったこと。

今さら会ったところで単に気まずいだけだし、大学時代につきあって別れたというだけだよ。

今は会社のお客様。お客様なら、おもてなしするのは、秘書課のお仕事。

あまり冷静に対処できる気がしないけれど。

エレベーターが10階に到着すると、さっさと降りて秘書課の執務室に戻る。

「山根さん。総務から通達が来ておりました」

「ありがとう」

同僚の言葉に頷いて、それからデスクに座るとメールを開いた。

日常業務は大忙し。それにしても……と、しまった名刺を取り出し、しげしげとそれを眺める。

マーケティング企画課の課長様が何しに来たのかしらね。

何もかも“今は昔”という感じだけれど。

メールアドレスをメモ帳に書き写し、名刺ファイルを引き出しから取り出して、その名刺をしまう。

個人的につきあうワケじゃないから、これでいいわけよ。

そう思ってファイルを閉じた。










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