イジワル同居人は御曹司!?
「じゃあ、ハグ」

私の鼓動が大きく跳ねた。

「あの!プライバシーの侵害なんで!」

慌てて逃げようとするけど、奏さんに腕を掴まれソファーに引き戻される。

「ハグまでか?ハグまではさせたのか?」

「奏さんには関係ないじゃないですか。振った女の干渉はしないでください!」

「やだ」

奏さんは私を抱き寄せた。

長い腕の中に閉じ込められて私は身動き取れなくなる。

ふんわりと奏さんのコロンが香る。

もうそれだけで私は胸は高鳴ってしまう。

ああ…やっぱコレだ。コレコレ。

ちょっと嫌々的な態度をとってみたものの、あっという間に骨抜きになる。

私はくったりとして奏さんの胸にもたれかかり、腰に腕を回した。

「実は桜井に告られました」

「何?!」

奏さんは身体をピクリと痙攣させる。

「でもお断りしてきました」

そうか、と言って奏さんはよしよし、と頭を優しく撫でる。

「だって桜井は私じゃなくて奏さんに恋してたみたいなんです」

「全く意味が解らない上に気色悪い」

「奏さんはみんなにモテモテなんですね。性格悪いのに」

奏さんの胸に顔を埋めたまま私はクスリと笑う。
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