イジワル同居人は御曹司!?
「其れは心強いな!」

会長は感慨深そうに何度も深く頷く。

「あの…これは…業務命令なのでしょうか」

正直、秘書の打診を受けて戸惑っている。

私は他言語コンテンツがリリースされるまでWeb再構築プロジェクトを担当したい。

なんてったって構想はほぼ奏さんの中にあるから…。

其れは歩も知っているハズなんだけどな。

「役員が藤田くんを希望すれば業務命令になっちゃうのかな」

会長が呑気な口調で尋ねると「ですかねぇ」と歩も同意する。

え…それって…パワハラじゃないの?

なんて思っても口に出来ないけどね。

好きなタイミングで希望の部署に異動し、やりたい仕事をする、なんてことは殆どあり得ない話しだ。

私は一介の従業員、業務命令なら従うまでだ。

「わかり…」ました、と言い掛けた所で部屋のドアが勢いよく開く。

一斉に音の方へと振り向いた。

信じられない光景に「うそっ!」私は思わず短い悲鳴をあげる。

「おい!ジジイ!」

乗り込んできたのは…まさかの奏さんだった。

「ちょっと…!」

私は慌てて止めようとするが、奏さんは無視して此方へズカズカ歩いて来る。

会長の直ぐ側でピタリと止まると、腕を組み恐ろしい形相で見下ろしている。

「何、勝手な事してんだ。話しが違うだろ」

「社内では会長と呼べと言ってるだろ」

しかし、会長は意に介している様子はない。

歩も兄の暴走を特段止める様子もなさそうだ。
< 306 / 328 >

この作品をシェア

pagetop