きみの愛なら疑わない

「もう一回言って」

「浅野さんが好きです」

「もう一回……」

浅野さんは私を好きとは言わないのに、私には何度も「好き」と言わせる。そのずるさに普通なら怒るのかもしれないけれど、望むままに何度も「好き」と囁く。

「好きです。ずっと一緒にベッドに居たいくらい」

そう言うと安心したように微笑んだ浅野さんは私の頬に手を添えて唇を重ねる。

まだ恋人未満で構わない。
私だけが浅野さんの特別だから。










出勤前にコンビニで慌てて買ったパックのクラッシュゼリーを吸いながら片手でキーボードを打つ。
浅野さんの家を出るギリギリまでベッドの中にいたから結局朝ご飯は食べられなかった。
自分の車で直行の浅野さんはのんびりできても、私はメイクをして髪を整えたら始業時間ギリギリだった。

『間に合った?』と浅野さんからのLINEに返信するとまたすぐに通知音が鳴る。今度は潮見からだ。

あれ、潮見今同じフロアにいるのになんでLINEしてくるんだろう。

『髪型とカーディガンで誤魔化してるけど昨日と同じ服なのバレバレだよ!』

潮見のメッセージを読んで浅野さんの家に泊まったことを指摘され顔が赤くなる。
下ろした髪を今日は結んで、会社のロッカーに置きっぱなしのカーディガンをずっと着て誤魔化していたけれど潮見にはお見通しだ。

「外回りいってきますー」

フロアのドアから潮見がスマートフォンを持ちながら顔を出して私に手を振っている。それに笑いながら手を振り返した。

浅野さんとの関係が進展したことを潮見には報告している。「だから最近優しくなったんだ」と納得していた。
確かに浅野さんは笑うことはまだまだ少ないけれど女性社員とも目を合わせるようになった。雰囲気が柔らかくなったと言われている。

< 104 / 164 >

この作品をシェア

pagetop