きみの愛なら疑わない

恋人未満になってからというもの、浅野さんのスキンシップの多さには驚かされる。もちろんそれはプライベートで二人きりの時だけだ。
こんな浅野さんは絶対に誰も知らない。会社の人はもちろん、優磨くんだって甘える浅野さんは想像できないだろう。

浅野さんに抱き締められると落ち着く。この時間が永遠に続けばいいと願う。

「足立さん」

「はい」

「もう一回言って……」

それが何の言葉かは言われなくても察している。

「好きです。浅野さんだけが大好きです」

何度も何度も口に出してきた言葉を今夜も欲しがる浅野さんに、私は心を込めて告げる。

安心した顔を見せる浅野さんは「別れるの名残惜しい」と呟く。

「来週も会えますから」

「仕事落ち着いたら二人でどこかに行こうか」

「いいですね! 映画に行きますか? それともお買い物?」

「そういうんじゃなくて……遠くに」

「遠く?」

「旅行とかどう?」

目を見開いた。
浅野さんから旅行という言葉が出ることが嬉しい。

「日帰りですか?」

「泊りで……」

照れたように目を逸らすから私は思わず口元が緩む。

「嬉しいです。すごく……」

私も照れて浅野さんの肩に顔をうずめる。

泊りの旅行をするということは、浅野さんと一晩中一緒ということだ。私からのお誘いじゃないことが堪らなく幸せだ。私と関係を進めようと思ってくれたということだから。

目が潤んでいる私を見て浅野さんも微笑む。

「楽しみだね」

「はい」

「お休み」

「お休みなさい」

別れのキスを交わすため顔を上げた。それが今日一日が終わる挨拶。
唇が触れようとしたとき、今度は私のスマートフォンが鳴った。

「…………」

「すみません……」

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