きみの愛なら疑わない
「前に僕がこのブックカフェの担当になったって話したらバイトとして入っちゃったんだ」
「へえー……」
「慶太さんがどんな仕事してるのか気になっちゃって。ちょうど俺もバイト探してたし、今は居心地よくて気に入ってます」
優磨くんは他の客から注文が入ったカフェラテを慣れた手つきで提供した。
「浅野さんはここによく来るんですか?」
二人は頻繁に会っている気がして聞いてみた。
「うん。元々僕が開店に携わったカフェだし、優磨がいるからね。会社帰りに時々寄るんだ」
「ここなら慶太さんが好きな本がゆっくり読めますしね」
「優磨が静かに読ませてくれたら早く一冊読み終わるんだけどね」
「まるで俺がうるさく邪魔してるみたいじゃないですか」
「いや、そう言ってるんだって」
普段なら冷たい空気を醸し出して人と距離をとる浅野さんが、優磨くんには壁を作っていない。遠慮のない会話から仲の良さが窺える。私は浅野さんと同じくらい優磨くんに興味を持った。浅野さんの態度も言葉も優磨くんは受け止めている。微笑ましく思えるくらい。
「ここのお店は長いの?」
「はい。オープニングスタッフなんで、そろそろ3年になります」
「大学生?」
「今4年です。春で卒業します」
一つ一つの質問にきちんと目を見て笑顔で答えてくれる。浅野さんとは大違いだ。
「卒業しちゃったら慶太さんに会う機会も減っちゃうから困りますけど」
「その言い方は本当に誤解されるからやめろ」
「でも俺、慶太さんが心配で……」
「優磨、いい加減それ以上はもう言うな」
浅野さんは冷たい言葉と鋭い目で優磨くんを牽制する。横にいる私は静かに怒る浅野さんに怯えて体が小さく震えた。今までの穏やかな空気が一変した。
「…………」