きみの愛なら疑わない
「そうそう。浮気するやつって結局誰のことも大事にできないんだよ。自分が一番大事なの。だからそいつと別れて正解!」
熊田さんが力強く今江さんを励ました。そう言う熊田さん本人が浮気をしそうだけど、と思ってしまったことは口には出さない。
「ほんと、次は誠実な人と付き合いたいです」
と言って浅野さんをちらっと見たことを私は見逃さなかった。
浅野さんなら絶対に浮気をしないだろうとは思う。だって浅野さんは裏切られたらどれだけ傷つくか身をもって知っているはず。
その一方で浅野さんの女性関係が乱れているという話も、ふらつく頭で思い返していた。
浅野さんは話に入ってくる様子もなく食べて飲んで、時々スマートフォンを弄っている。浮気の話を聞いているのかも分からない。
酔っているのを理由にして浅野さんに近づけないかな……。ああでも会社の子には手を出さないんだっけ。だめだ私、完全に酔ってる。普段ならそんなこと考えたりしないのに。
誰かを好きになると人はこんなにもバカになる。他人の恋愛に関わっただけでも悩んで苦しい。そう、恋だの愛だのは人生を左右する。
「ほんと……浮気最低……」
あの時あの人を止めていれば、全部がうまくいったのに。
「足立さん?」
名を呼ばれて我に返り顔を上げると浅野さんが私を見つめていた。
「………え?」
「大丈夫?」
回りを見ると潮見も熊田さんも、同じテーブルの同僚が私を見ていた。
「なんか今の言葉に恨みがこもってたよ。もしかして足立さんも浮気経験者?」
熊田さんの指摘に慌てて誤魔化す。
「違います違います! 浮気はしたこともされたこともないですよ! すいません酔っ払ったみたいで……」
浅野さんが珍しく私を見ているからか、体がどんどん熱くなる。