きみの愛なら疑わない
熊田さんについていくなんて万に一つもないのだけれど。
「誘われたから簡単についていくノリの子が苦手だから」
「私も軽い調子の人は苦手です。でも熊田さんについてく人なんて滅多にいないと思うんですけど」
前を歩く浅野さんが小さく笑った気配がした。鼻にかかったような息を短く漏らす音がする。
ああ、そうだ。この人にはついていっちゃうような女に心当たりがあるんだった。私が浅野さんに軽い女だと思われなかったのはよかったけれど。
「足立さんは潮見さんの言うように一途だと思ったから」
「え?」
浅野さんは前を向いたまま私に言った。
「自分を安売りしたり傷ついてほしくないんだ」
「私に傷ついてほしくないんですか?」
一途だと思ってくれて今まで以上に意識してしまう。傷ついてほしくないって言われて期待してしまう。
「足立さんのように好きな人を大切にしたいって思ってくれる子は、同じくらい足立さんを想ってくれる人といなきゃだめだ」
目が潤むのを感じた。鼻の奥がつんと痛む。
私が想ったのと同じくらい私のことを想ってくれる人と……。
「足立さんだけをちゃんと見て、一途に想い返してくれるくらいの人とね」
「そんなこと……許されるんでしょうか?」
私の言葉に浅野さんは振り返って不思議そうな顔をしたけれど
「足立さんに好かれる人は幸せだよ」
と珍しく優しい目をして言うから、ついに大粒の涙が私の頬を伝った。
あなたを想うことは罪深いんです。私は純粋なんかじゃない。清らかじゃない。浅野さんにそう言ってもらえる資格なんてない。なのに私に好かれる人が幸せだと言うのなら、私はあなたを幸せにしたい。
「浅野さんが好きです」