きみの愛なら疑わない
ついに言ってしまった。私を見る浅野さんは目を見開いた。
「…………」
「私は浅野さんが好きです」
黙ったまま突っ立っている浅野さんにもう一度想いを伝えた。
「足立さん酔ってる?」
「酔ってません!」
フラフラするし頭も痛いけれどこの気持ちは酔った勢いで湧いたものじゃない。
「ずっと前から好きでした」
あなたの隠れた優しさが。油断したときに見せる笑顔が。
「それとも今熊田くんから助けたことで勘違いしてる?」
「違います! 本気です!」
「足立さんは酔ってるし、僕がピンチに助けたことでそういう気持ちに向いちゃったのかもしれない」
「違うんです! 私ずっと……」
あなたが好きだった。
下を向くと涙がぽたぽたと地面に落ちてシミになる。
「今日のことも今の気持ちも明日になれば忘れるよ」
「…………」
今度は私が黙る番だった。浅野さんは私を受け入れないどころか、この気持ちを勘違いだと否定する。
「僕を愛さない女に興味はないよ」
「え?」
この言葉を聞いて私はぐしゃぐしゃな顔のまま浅野さんを見た。
愛さないなら興味はないってどういうこと? 私はたった今告白したというのに。
「今の君は雰囲気に飲まれてるんだ」
「そんなこと……」
「素面なら全然起こらない感情だ」
何を言っても今の私をこの人は否定する。
「お酒は控えな。足立さんは酔うと泣き出すタイプみたいだし、熊田くんみたいなのに狙われたら困るでしょ?」
「…………」
言い返すことができなくなった私から離れて浅野さんは道路に近づく。手を上げた彼の前には一台のタクシーが止まった。
「乗って」
「嫌です」
まだ話は終わっていない。やっと気持ちを伝えたのだから。