きみの愛なら疑わない

「どうして私の気持ちを聞いてくれないんですか!? 勘違いなんかじゃないのに!」

「…………」

受け入れてもらえなくてもいいからこの人に最後まで知ってほしい。あなたを大事に想う女だっていることを。

浅野さんは私の腕を強引に掴んだかと思うとタクシーに押し込んだ。普段の浅野さんからは想像できない強引な行動に抵抗する暇もなく、タクシーの後部座席に転がるように乗せられた。そして手に一万円札を押し付けられる。

「これで家まで帰りな」

手の中で丸まるお札を見て一瞬で怒りが頂点に達した。

「浅野さん!」

「怖いんだ」

「え?」

「出してください」

屈んで運転手にそう伝えると浅野さんはタクシーのドアを強く閉めた。
私は慌てて窓を開けて浅野さんの名を叫んだ。

「素面でもう一度告白したら信じてくれますか!?」

浅野さんの答えを聞く前にタクシーは動き出した。
去り際に見た浅野さんが泣きそうに目を赤くして見えたのは、私が酔っているからなのだろうか。

「どちらまで行かれますか?」

空気を読んだように浅野さんの姿が見えなくなってから声をかけてきた運転手はこんなシチュエーションに慣れているのかもしれない。自宅の大雑把な場所だけ告げると私は目を閉じた。

どこかで思っていた。私の気持ちに喜んでくれるんじゃないかって。あなたを好きになる人はここにいるんだよって知ってほしかった。

『足立さんに好かれる人は幸せだよ』と言ったのに、『怖いんだ』とも言った。恋愛が怖い。そういう意味なのだろうか。
またも私の言動で彼の傷を抉ったかもしれない。
それでも私はあなたを幸せにしたい。



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