きみの愛なら疑わない
大事な人には傷ついてほしくない。私だって同じように傷ついてしまうから。
「……浅野さん?」
私を見つめたまま浅野さんは固まってしまった。
「あの……本当に大丈夫ですか?」
もしかして電話の相手に私が思う以上に傷つけられたのかな……?
心配になり近くに寄ったその時、浅野さんの手が私の頬に伸びて優しく触れた。
「え?」
浅野さんにしては有り得ない行動に体が硬直する。そのまま私の目をじっと見つめる浅野さんの目を私も見返した。メガネの奥の長いまつ毛と綺麗な瞳が私を捕らえて離さない。
「浅野さん……」
この流れはついにきた。ここが本屋だろうと人の気配があろうと、もうどうでもいい。私は目を閉じた。早く彼の唇が触れてくれないかと願って。
「見つけました!」
後ろから突然声が聞こえた瞬間、浅野さんの手は頬から勢いよく離れた。
振り返ると息を切らした優磨くんが立っていた。
「はぁ……走ったー……」
「走ってこなくてもいいだろ。すぐ近くなんだから」
浅野さんは何もなかったかのように自然と私から離れて優磨くんに近寄った。
「だって待たせてるのが悪くて」
浅野さんは優磨くんと待ち合わせしていたようだ。私にそれを言うこともなく。
「足立さんお待たせしてすいません」
優磨くんが私に申し訳なさそうな顔を向けた。待っていたわけじゃない。来ることも知らなかった。
「ううん、気にしないで……バイトだったの?」
「はい。今終わって急いで来ました」
「お疲れ様……」
無邪気に笑う優磨くんにつられて私も笑ってしまう。心の中で浅野さんに失望しながら。
「ほら、もう発売してるよ」
浅野さんは持っていたマンガを優磨くんに差し出した。
「わぁ、あった! ありがとうございます! じゃあ買ってきます」