きみの愛なら疑わない
優磨くんは少女マンガを持ってレジまで行ってしまった。
それでも残された私たちの距離が再び近づくことはない。
「優磨くんと待ち合わせしてたんですね」
私の声は自然と低くなる。浅野さんへの恨みがこもっているから。
「待ち合わせしてたんじゃないよ。僕が呼んだの」
「どうしてですか?」
「…………」
「私と二人きりになるのは嫌ですか?」
「…………」
無言は肯定と同じだ。
浅野さんは無表情で決して私を見ようとしない。棚に並んだマンガをひたすら見ている。
「幸せにするって言った私に浅野さんは『やれるものならやってみな』って言いましたよね。なのに私の気持ちから逃げるってことですか?」
私の攻撃に反撃してくれると思ったのに。ここまでかわされ続けてはいい加減くじけそうだ。
「さっきの電話の相手、彼女じゃないよ」
いきなり話題を変えられて戸惑う。
「誘われたから一回だけ寝た女」
浅野さんの口から初めて女性関係の話題が出た。そしてそれは噂通りの内容だった。
「いいセフレになるかもって思って今度は僕から誘ったんだけど、向こうのノリが悪くてこの間ドタキャンされたんだ」
淡々と話す様子とは裏腹に、内容は私には重くて残酷だ。
「今日またその女から誘われて約束してたんだけど、僕がすっかり忘れてて。向こうが怒ってかけてきた電話だよ」
知らない人が聞いたら浅野さんの声には感情がこもってないように聞こえるかもしれない。でも私には悲しんでいるように聞こえる。
「たった一回寝ただけで彼女だと思い込むような面倒な女だったな。こっちがその気になったのに、最初に拒絶したのはあっちだからね」
浅野さんは心で叫んでいる。泣いて苦しんで叫んでいる。自分で自分を傷つけている。
「だめだねもう。お互い誠意がないから。その女とは今関係を切ったよ」