きみの愛なら疑わない

「…………」

「もう僕はまともな恋愛はできないよ」

予想以上に彼の傷は深い。その深い傷が癒えないうちに更に自分で傷を広げていく。

「浅野さんからそんなこと聞きたくなかった……」

そんな浅野さんを見るのは辛い。

「優磨には内緒だよ。特に女関係は。あいつ真面目で僕のことになると心配性だからね」

「軽い女は嫌いじゃなかったんですか?」

「嫌いだよ。嫌いだから利用する。そういう女だって僕のことを都合よく性欲処理に使ってるしね」

目の前に立つこの人は私の知っている浅野さんじゃないようだ。傷の奥にまで闇が広がっている。こんなにも彼は過去に傷ついたままだ。

「そんなことはしないでください……」

「驚いた? それとも嫉妬した?」

「本当の浅野さんはそんな人じゃないです……」

「僕はこういう人間だよ。足立さんが好きになる価値のない男」

嫌なことを振り払うかのように首を左右に振った。けれど浅野さんは変わらず冷たい目をしている。

「もう僕を好きなんて言わない方がいい」

「私は……浅野さんを幸せにします……」

「僕は今でも十分恵まれてるって言ったよね。君は必要ない」

「…………」

必要ないとはっきり言われて息を呑んだ。

そうだ。浅野さんには元から私は必要ない。私は初めから浅野さんを不幸にしていた。

私を見る視線に耐えられなくて下を向いた。浅野さんが一歩近づき下から私の顔を覗き込んで容赦なく攻める。

「足立さんは僕とどうしたい? セフレが増えたら、それはそれで幸せだけど」

かっとなった私は手を上げて浅野さんの顔に振り下ろした。パシッと乾いた音が響く。

「バカにしないでください……」

「…………」

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