きみの愛なら疑わない
本屋を出て三人で駅まで歩いた。
「優磨くんは少女マンガも読むの?」
「少女マンガ全部じゃないですけど、このマンガは好きです。でも好きになったのは最近なんですよ。大学の友達が読んでて面白いって薦めてくれて」
屈託のない笑顔を向けてくれる。優磨くんはいつだって人を元気にさせる。特に悩んでいる今はこの子の存在はありがたい。
「私もそのマンガちょっとだけ読んだことあるよ。映画化が決まった時に試し読みで」
「映画も気になってます。このマンガ、恋愛なのにミステリー要素もあるんで面白いんですよ」
「なのに感動もするって聞くし、周りみんな観てるんだよね」
「じゃあ今度観に行きませんか?」
「え?」
「観に行きましょう。その映画」
優磨くんはさり気なく誘ってくれているように見えて実は緊張しているようだ。以前見たように目の周りが赤くなっている。
私は返事に困った。優磨くんと二人で会わないと決めたのに。
「それはいいね。二人で観に行ってくればいい」
横で黙って聞いていた浅野さんが話に入ってきて『二人で』と少し強めに言って煽る。
「後は二人で相談しなよ。僕はここで」
「え? 帰らないんですか?」
私は慌てた。浅野さんは優磨くんと二人きりにしようとしているから。
「うん。会社に戻るよ」
「今からですか? もう玄関のロックかかっちゃいますよ」
「警備室に言って入れてもらうよ。新店オープンが来週に迫ってるからね」
だからって今から会社に戻ることはないのに。そんな気を遣ってまで優磨くんと私をくっつけたいのか。
「優磨は足立さんをちゃんと送っていくんだよ」
「はい!」
何も知らない優磨くんはニコニコと笑顔を見せる。左右に揺れる尻尾が今にも見えてきそうだ。