きみの愛なら疑わない
「じゃあ」
浅野さんは反対方向に体を向けると会社までの道を戻っていく。私は振り返ることのない浅野さんの背中を見て涙を堪えた。
泣くな、隣には優磨くんがいるのに。浅野さんをこんな態度にしたのは私じゃないか。
言い聞かせても過去の自分を恨んでしまう。
彼を好きでい続けることが辛くなってきた。
「足立さん、行きましょうか」
「うん……」
この状況に私は吹っ切れた。
『それでも好きでい続けられるか』って?
上等だ。この挑戦、最後まで受けて立とうじゃないか。
辛くて苦しくて、最後はあなたのように壊れかけてしまうとしても、それでも好きでい続ける。
電車に乗って6駅。最寄り駅から歩いて10分ほどで母と暮らすマンションが見えてくる。マンションの前まで送ってくれると言う優磨くんに甘えて駅から二人で歩いた。
「優磨くんと浅野さんって本当に仲がいいんだね」
「そうですね。兄と弟って感じですかね。俺は姉がいるんですよ。慶太さんも妹さんがいますし、年齢差もあってお互いに兄弟みたいに接しちゃうんでしょうね」
姉がいるという優磨くんにビクつく。いつどんなタイミングで私と美麗さんの関係がばれてしまうか分からないのだ。
「浅野さんとはどうやって知り合ったの?」
優磨くんが浅野さんの実家によく行っていたと聞いたけど、年齢も立場も違ったはず。そもそも美麗さんと浅野さんがどうやって知り合ったのかも詳しく知らない。
「慶太さんの実家ってパン屋さんなんですよ。俺がそのパン屋の常連だったんです」
浅野さんの実家の話は初めて聞いた。美麗さんは浅野さんのことを詳しくは言わなかったし、私も当時は知ろうとしなかった。