きみの愛なら疑わない
「俺の家じゃ惣菜パンなんて食べれなかったんです。一流ホテルのシェフが焼いたクロワッサンとか取り寄せたフランスパンみたいなものしか食べたことがなくて、商店街のパン屋って新鮮だったんです」
城藤の人間が惣菜パンを口にすることなんてないのかもしれない。
思い返せば美麗さんとファーストフード店に入ったことなんて記憶にない。お洒落なカフェくらいなものだ。
「あ……嫌みでしたか?」
「ううん、そんなことないよ」
私の言葉に優磨くんはほっとした顔をした。
「学校帰りに親に内緒でこっそり買いに行っているうちに、当時大学生でお店を手伝ってた慶太さんに勉強教えてもらうようになって」
大学生の浅野さんはきっと今よりも温厚だったに違いない。美麗さんと付き合っていた頃のように、優磨くんにも優しかっただろう。
「ほんと、お兄ちゃんって感じです」
優磨くんは浅野さんを心から慕っている。誰よりも浅野さんの気持ちを理解して、長い年月を一緒に過ごしてきた。でも浅野さんが今まともな恋愛をできていないこと、その理由をどこまで知っているのだろう。
「優磨くんはお姉さんとは仲いいの?」
「姉とはもう何年も会ってません」
「そっか……」
「家を出て行ったので」
私も美麗さんとはあの式以来連絡を取っていない。きっと彼女は今も実家に顔向けできないのだろう。
「姉は色々あって……」と言った優磨くんは怒っているようだ。
「親は何度か連絡を取っていたみたいですが。生活に困ってお金がほしいって言ってくることもあったようで。でも俺は姉とは連絡とってないので今どこで何をしてるのかは分かりません」