きみの愛なら疑わない
優磨くんはやっと耳からスマートフォンを離した。私は初めて優磨くんに怒った。これでは浅野さんに今からホテルに入ると勘違いされてしまうじゃないか。
「すいません。でも完璧です」
「どういうこと?」
「美紗さんの嫌がる声も効果抜群でした」
「意味が分からないんだけど……」
「まあ待っててください。たぶん30分くらいで来ますから」
優磨くんは目の前の植え込みのタイルに座った。
「寒いかもしれないですけど、少しだけ我慢してくださいね」
私を安心させる優しい笑顔で横に座るよう促した。
優磨くんに言われるままにしばらく待つことにした。周辺のホテルに入るカップルが不思議そうな顔をして私たちを見ていった。
もうすぐ日付が変わろうかという時だった。
「優磨!!」
離れたホテルの角を曲がってこちらに走ってくる人の姿が見えた。
「ほらね、すぐに来たでしょ?」
優磨くんは立ち上がって私に笑いかけた。こちらに近づいてくるのは浅野さんだ。笑う優磨くんとは反対にものすごく怒っているようだ。眉間にシワが寄っているのが見える。
「優磨! お前……何してるんだよ!」
私達の目の前で止まった浅野さんは肩で息をして怒りのオーラを発している。優磨くんに殴りかかりそうなくらいの殺気を感じて、私は怯えて立ち上がると思わず優磨くんの近くに寄った。
「何もしてないですよ。でも慶太さんがあと少しでも遅かったらホテルに入ってたかもしれないですね」
この言葉で浅野さんは更に機嫌が悪くなった。そして事の成り行きを不安に思っている私と目が合った。その不安な顔を勘違いしたのか、珍しく優磨くんを睨み付けている。優磨くんは始終ニコニコしているのだけれど。