きみの愛なら疑わない
「っ……」
キスをされる。
そう思った瞬間、私の左腕が引っ張られて体が揺れた。
「やめろって言っただろ」
ぶつかる衝撃と共に耳のすぐ横で浅野さんの声が聞こえる。私の体は後ろから浅野さんの腕に包まれている。
「え……」
この状況に戸惑った。浅野さんは優磨くんを睨み付けて、優磨くんはやっぱり笑顔だ。
「そう、最初からそうやればいいんですよ」
「…………」
腰に回った浅野さんの腕の力が少しだけ強くなった。私は小柄ではないけれど、体全てを包まれている感覚になる。私の心臓の鼓動が浅野さんの胸に伝わってしまいそうなほど密着している。
「浅野さん……あの……」
私はどうしたらいいのか分からないで困惑したままだ。顔を少しでも動かしたら浅野さんの顔に当たってしまう。だから抱き締められたまま動けないでいた。
「美紗さんが困ってますよ」
「…………」
優磨くんの言葉に浅野さんはやっと私を解放したけれど腕はつかんだままだ。
「もう遅いのでちゃんと美紗さんを送っていくんですよ」
「後で連絡するからな」
「はいはい。どうぞごゆっくり」
浅野さんが私の手首をつかみ直すと引っ張って歩きだした。
「ちょっ、え……浅野さん!」
私が抵抗しても信じられないくらいの力で引っ張られる。優磨くんは私達に笑顔で手を振っている。
「浅野さん痛いです。放してください!」
私の訴えを無視して振り返ることなく歩き続ける。どうしたらいいのか分からずに優磨くんの方を振り返ると、彼はホテルの前で立ったまま私たちに最後まで背を向けていた。
「浅野さん!」
「…………」
「放してください! 私のことなんてどうでもいいと思ってたんじゃないんですか?」
足に力を入れても手を振りほどこうとしても無駄だった。どんどん引っ張られる。男の人の力には敵わない。