きみの愛なら疑わない
不安よりもだんだん恐怖が勝ってきた。優磨くんと出掛けたりして、ホテルにまで行くと勘違いされた。あれだけ浅野さんが好きだと言っておきながら他の男と会う私は浅野さんの元婚約者と何も変わらない。私はまたしてもこの人を傷つけてしまった。
大通りまであと少しというとき、浅野さんはやっと止まった。掴まれた私の手はもう感覚がない。それでも浅野さんは放してくれなかった。
「浅野さん?」
「…………」
「怒ってます?」
「当たり前だろ」
やっと話してくれた言葉は冬の空気に溶け込むように冷たい声だ。
「少しは警戒しなよ。優磨だって男なんだよ」
「あの……」
「ホテルまでついていくなんて君はバカか?」
みるみる目が潤んできた。怒られたことは何度もあるけどバカと言われたのは初めてだ。
「っ、うっ……」
ポロポロと涙が地面に落ちた。驚いた浅野さんはつかんだ手の力を少し緩めた。
「ずっと私の気持ちを無視してたのに……今更怒るなんておかしいのはどっちですか?」
泣きながら浅野さんに訴えた。だって優磨くんと二人になるように仕向けたのは浅野さんなのだ。
「私はずっと浅野さんが好きだったのに!」
浅野さんだけを見て、浅野さんだけを好きでいた。
「浅野さんだけが……」
言いかけて再び浅野さんの腕に包まれた。今度は前から。私の首と肩の間に彼は顔を埋めるように。
「君は本当にしつこいね……」
浅野さんの吐息が首元にかかってくすぐったい。
「しつこいのが浅野さんを落とすテクニックです……」
「それは全然効果ないよ」
軽く笑いながらも手を上げて私の頭を撫でた。
「その言葉も信じられませんよ……」
効果は少なからずあったはず。こうして抱き合うのは浅野さんから始めたことだから。