きみの愛なら疑わない
「女の子が望むようなことも言えないし気も遣えないよ」
「それもよく知ってますから」
「面倒な男と思うかも」
「浅野さんが面倒なのも慣れてます」
全部知っても、それでも離れたくない。
「浅野さんこそ、私はセフレじゃ嫌ですよ……」
都合のいい時だけ体を重ねる関係はお断り。あなたの一番になりたいのだから。
「セフレになんかしないよ」
耳のすぐそばから囁かれるのは腕の中に縛りつける魔法の言葉。
肩が震えて足に力が入らない。
「君を信じてみたくなったよ」
この言葉が何より私の心を軽くする。
恋愛に憶病になっている浅野さんが私を信じてみたいと言ってくれた。
「大事にする」
力強く言われて目に涙が滲む。
私は浅野さんのそばに居てもいいって認めてもらえた。
浅野さんの唇が私の髪に触れ、耳から頬へと順番にキスをされたとき、くすぐったさに抵抗して顔を動かした瞬間唇を奪われた。優しく触れて、離れたと思ったらまた触れた。浅野さんのメガネが私の鼻に触れてずれてしまう。だから私は両手で浅野さんのメガネをゆっくりはずすと、目を瞑ってもう一度キスをねだった。
◇◇◇◇◇
正面の壁一面ガラス張りのチャペルからは青く澄んだ海に反射した太陽の光が差し込み、雲一つない青空と海を背景に立つ虚ろな顔をした浅野さんが目に焼き付いて離れなかった。
今では私にキスをしたあとの少し照れた顔や、別れの間際に向けてくれた笑顔が脳内を占めている。
私は単純だった。
浅野さんの全てに一喜一憂して、このまま過去の罪を告白することなく彼のそばにいられると思っていたくらいに。
キスから浅野さんとの新しい関係が始まった。そして同時に新たな罪の始まりでもあった。