GREEN DAYS~緑の日々~
玲子と瑞恵が帰った後、病室に国人が一人で現れた。夏穂は優美がくれた花束とカードを見せた、国人は微笑みながら頷いた。

「水泳大会、いつだっけ」

「明後日」

「優美が迎えに来てくれるから。あたし明日退院だし」

国人は窓の外を見た。もう風は優し気である。

「スカウト、来てるんだ」

「スカウト?」

「うん」

「水泳の?」

「うん」

「行くの?」

「わからない」

 国人は手の中で見舞いの花を弄んでいる。国人の横顔。何だろう。上手く言葉が見つからない。ここ何週間か、ここ何週間かの間に、何だか国人が変わってしまった様な気がする。元々、国人は物静かな性格だ。だが夏穂は知っていた。心の奥底にある国人だけの国人なりの思いやりを。そしてその事に気が付いているのは、国人の母親と自分だけだと。それが嬉しかった。そういう国人の横にいられるのが嬉しかった。今まですぐ真横にいた国人。だが国人は変わってしまった。今はもう国人の背中しか見えない。まるで階段を一歩先に進まれてしまった様な気がする。それは国人が男で自分が女だからだろうか。上手くは言えない。国人の横顔。それは何だかすっかり大人びて。前よりも大人びて。何だか距離がある様で。

 寂しさを感じる。洸がいなくなった今、国人までが自分の道を歩き出そうとしている。だとしたら自分はこのままでいいのだろうか。

「あたしもスカウト来ないかな」

「えっ?」

「絵の」

国人は苦笑した。

「いつか俺の事描いてくれよ」

「うん」

「上手くなってからでいいからさ」

「だね」

二人は言葉少なに微笑んだ。

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