GREEN DAYS~緑の日々~
夏穂が通う学校では、それぞれの部活動を終えた国人と優美が肩を並べて帰っていた。

「明日、夏穂迎えに行って、早めにいい席陣取っとくから」

国人は頷いた。優美はしばしの間の後、穏やかな声で話始めた。

「初めて、親に逆らったって言うか。間違ってるのはお母さんの方だって。石川先生に言われた通り言い返したら、お母さん黙っちゃって」

優美は俯いた。

「先生に会って、初めてそういう事がわかった。それから自分がした事も。何てひどい事したんだろう。あたし、いつかもし自分の子供が生まれても、あたしの母親があたしや夏穂にした様な事は絶対にしない」

優美は少し涙ぐんでいた。

「…青木のお母さんの考えが百%間違ってたとは思わない。人の価値観や考え方は人

それぞれだから。俺達がそれぞれ思ってるいい事や悪い事。それは人から見たら全く逆に感じる時があるかも知れない。お母さんの事、百%は軽蔑したら駄目だと思う」

「国人」

「俺の母親、煩くてけたたましいけど、いつも俺の事を一番に考えていてくれる。だからきっと、青木のお母さんもそうだと思う。俺も石川先生に会ってわかったんだ。誰の事も責めちゃいけないって。だって誰のせいでもないから。夏穂のせいでも。夏穂の親のせいでも」

 夕映えの道を二人で歩く。優美は国人の横顔をちらりと覗いた。いつも無口な国人。正直言って、いつも何を考えているかわからなかった。だけど国人の様な人間こそ、いつも心の中で何か大切な物を考え続けているかも知れない。自分の事も気遣ってくれ、そして自分の母親の事までも気遣ってくれる。夏穂に対してもそうだ。いつも傷付けられるばかりの日々を過ごして来た筈なのに。国人も夏穂も、どうして二人とも許してくれるんだろう。洸がいつか言った言葉。夏穂は君に何もしちゃいない。全くだ、その通りだ。馬鹿な事をした。本当に馬鹿な事をした。馬鹿な事をして改めて自分が馬鹿だったと感じられる。

 優美は肩を震わせながら泣いていた。国人は肩のカバンを掛け直した。こんな時、洸ならどうしただろう。上手く言葉が見つからない。洸は言っていた。夏穂の為にどれだけ泣けるかじゃなく、どれだけ何か頑張れるかを考えたい、と。国人は鼻をすすった。

「あいつと仲直りしてくれてありがとう」

「えっ」

「お前、いい奴だな」

そう優美に告げた国人の瞳。僅かに潤んでいる国人の瞳。今まで見た事のない国人の横顔。優美はほんの少し微笑んだ。

「あんたもね」

二人はそれから何も話さずに歩き始めた。今何かを話せば何かが壊れてしまう様な気がして。



< 36 / 49 >

この作品をシェア

pagetop