隣のダメ女。
押し入れいっぱいに積み上げられたビデオテープ。

ひとつ山を崩せば、ビデオテープの雪崩を起こすに違いない。



「……これのどこが、呪いなんですか。」


この中に、呪いのビデオテープがあるのなら話は別だ。その前に青狸はどこに消えた?

しかも、ビデオテープには去年、いや、それよりも前に最終回を迎えていたドラマ名が書いてある。


呪いのビデオテープの確率は、一気に0%に近づいた。



「す、すみません。」


「やっと、謝る気に……。」


彼女はビデオテープの山を庇うように、俺の前に立ちはだかった。



「この子たちは、呪いなんかじゃありません!……私の友達なんです!」


「お前のほうが呪いなんかより、よっぽど恐ろしいわ。」



ビデオテープを本気で友達にしてるのは、お前くらいだぞ。



「とにかく、こんなに友達はいらねぇだろ。」


「そ、そんなこと……ありませんっ!」


「いいか?現実(リアル)で、こんなに友達が居ても、ちゃんと相手にしてやれるか?」



このビデオテープを友達だと認めている時点で、俺も相当いかれてるけどな。


しばらく考え込んだ後、彼女は顔を上げた。



「……ムリですね。はい。」


「そうだろう?それに、押し入れは布団を入れるところだ。」



本来、入るはずだった布団は部屋の隅に追いやられている。



彼女曰わく、隅で寝るほうが落ち着くそうだ。
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