隣のダメ女。
溜め息ひとつ零すと、彼女は泣く泣くビデオテープの山に手を掛け始めた。



「さよなら……ヒデオさん、のりこさん……うぅっ!」


「ビデオテープに名前なんか付けてる暇があれば、少しでも部屋を綺麗にする努力をして欲しかったですね。」



つい先日、片付けたばかりの部屋は足の踏み場がないほど散らかっていた。



「誰が掃除すると思ってるんですか。誰が。」



足元に落ちる本を拾っていると、壊れかかって妙な音をたてるチャイムが鳴り響いた。



「このチャイムも直して欲しいですね。」



そんな愚痴を吐くが、彼女はビデオテープ1つ1つに別れを偲んでいるようで、全く聞いてはいなかった。



「はーい。」



これまたサビついて妙な音を奏でるドアを開くと、そこにはダンボールを抱えた宅急便が立っていた。



「沼田様でしょうか!」



元気と押し売りが得意な宅急便の配達員。

それというのも、忙しく、すぐに出れないときなんかは勝手にドアを開けて「こんにちはー!」なんて言ってのける。

鍵が掛かっていたら、どうするんだ。かなり、恥ずかしいだろ。



「沼田さん……?」


何も言わない俺に、配達員は確かめるように、もう一度言った。
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