めんどくさがり系女子の恋愛事情
少しずつ感覚が戻っていく。
風と一緒になって駆け抜ける。
この感じ、何年たっても変わらないんだな…。
100mを何度か走ったら、さすがに疲れてしまった。
いきなりこんなにやったら体痛めそうだと思った私は、体を休めるために木陰に移動した。
よいしょ、と言いながら地面に座り、グラウンドを見渡した。
まず目に映ったのは白球を追う男子たち。
太陽の下で大きな声をあげ、イキイキとしていた。
そしてその隣にいたのは陸上部。
よく見てみると、集団の中にリレーメンバーの今井さんの姿を見つけた。
きれいなフォーム。さすがだな。
…中2でやめずに続けていたら、あの中に私の姿があったのだろうか。
「ふー…。」
久しぶりに朝から走ったら、余計なことを考えてしまった。
体育祭が終われば、私はまためんどくさい授業をどう回避するか頭を悩ませる日々が続くのだ。
もうこの感情は過去に、あの時に置いてきたこと。
思い出してはいけないこと。
「よし。」
そろそろ練習を再開させようと腰を上げたそのとき
「ひゃっ。つめたっ。」
頬に冷たい何かが当たった。
「わりぃ、驚かせるつもりはなかったんだけど。」
声のほうを向くと、ペットボトルを片手に持っている高野くんがいた。
「え、高野くん?」
「おはよ、青山さん。
はい、これ差し入れ。」
そう言って差し出されたペットボトルを戸惑いながら受け取る。
もらっていいのかな…でもちょうど喉乾いてたんだよな…。
「えっと、おはようございます。
あの、ありがとうございます。」
「なんで敬語?(笑)」
クスクス笑う高野くん。
そんな姿も様になりますね。
さっきは自然と敬語になっちゃったな、なんでだろ。
…じゃなくて!
大事なことを忘れてた!
「どうしてここにいるの?」
さっきグラウンドを見たときにいたのは野球部と陸上部。
サッカー部の高野くんは今日朝練がないはず。
制服着てるし…なんでここにいるの?
「俺、朝練ない日でも割と早めに学校に来てんだ。
それで教室の窓開けたときに青山さんの姿が見えてさ。
で、来ちゃった。」
「は、はぁ。」
いや、来ちゃったって、そんなかわいく言われましても…。
てか、窓から見えたからってここに来なくてもいいんじゃない…?
「青山さんこそ何してんの?
体操服着てるってことは、体育祭の練習?」
「え、あぁ、まぁ、そんな感じ。」
我ながら切れの悪い返事と苦笑い。
練習してることがバレたくないとか、そんなんじゃないけど
できれば知られたくなかったな。