君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
一瞬、本当にこの人として、大丈夫なのかな、という不安に襲われる。
それを見てとったのか、新庄さんが吹き出した。


「冗談だ」


ベッドに倒されるのと同時に、パンツが足から引き抜かれる。

新庄さんの手が、じっくりと確かめるように、私の腿からひざを行き来する。
少なくともスカートの時は、こんなに急いていなかったことを考えると、察するに、脚にさわりたかったらしい。

と、思ったんだけど。

キスをくれながら、新庄さんが、トップスをまとめて頭から引き抜く。
ピアスが引っ掛かるくらい、乱暴に。

痛い、と抗議しても、もう何も言ってくれない。
背中のホックをあっさり外される。

なんだかやっぱり、急いてる。
そして、相当、慣れてる。

目が合って、私のちょっとしたあきれに気づいたらしく、新庄さんが困ったように笑った。

私の身体に、さっと目を走らせると、満足したように微笑んで、抱きしめてくれる。

息が漏れる。
初めて、肌を合わせて、抱きあって。

新庄さんの身体を、直接感じて、涙が出るほど嬉しくて。

同時に、急に怖くなった。

何を今さら。
そう思うけれど。

私がこわばったのが、当然、わかったんだろう。
新庄さんが身体を起こして、私を見おろした。


「どうした」


ちょっと、困惑しているような表情。

何も言えない。
初めてじゃあるまいし。

けど私は、ずっと秀二とだけだったから。
そりゃまあ、それ以前はかなり自由にしてたけど、何年も前の話で。

怖い。

どういうこと、怖いって。

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