麗しき星の花
「他にチビはいねぇだろ。ずっと同じことやってると飽きるんだよなぁ。そんで嫌になって続けらんなくて、稽古やめちまうんだぜ」

「シンくんをお前と一緒にするな」

「オマエが決めんなよ。どうなんだよ、チビ」

「え、えーと、俺は、大丈夫、です?」

 疑問形になってしまったのは、確かに鷹雅とやるような、遊び混じりの訓練の方が楽しいからだ。聖との基礎訓練も強くなるためと思えばやる気は出てくるが、やはりそこは13歳の少年。遊びの方に心惹かれないわけはない。

 すると、聖の顔に笑みが浮かんだ。

「……シンくん」

「は、はい! 基礎は大事です! 俺は基礎がやりたいです!」

 何やら不穏な空気を感じて、シンはそう叫ぶ。打ち合う剣の音が、若干崩れた。

「いや、そうは思ってねぇ顔だよなぁ」

 神楽がニヤニヤと笑う。

「神楽、邪魔するな」

「邪魔してんじゃねぇ。提案してんだよ。もっとこうしたらいいんじゃねぇかって、アドバイスだ」

「ああ言えばこう言う……」

 聖の眉間に皺が寄る。そんな顔でもやっぱりイケメンだし、剣もブレない。

「別に毎日やれって言ってるわけじゃねぇぜ? 今日、俺がいるときくらい遊んだっていいんじゃねえかって話だ。俺が相手してやってもいいしさぁ。どうだよチビ、一度俺と手合わせしてみるってのは」

「え、神楽さんも、剣士、なんですか?」

 チラチラと神楽を振り返るシン。彼が先程『剣道をやっていた』と言っていた話など、まるっと頭から抜け落ちているらしい。

 そうやって神楽に気を取られるから、アストレイアの重心が少しブレて、危うく聖の剣に弾き飛ばされそうになった。

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