麗しき星の花

「俺の獲物は刀。異国人にも分かりやすく言えば、侍ってヤツ？」

「侍！　あ、うわ！」

　侍ならば、瑠璃やめのう、孔雀といった夕城の剣客たちと同じ。

　それなら彼らの動きを想定した修行も出来るかも、なんて考えが過ぎって隙が出来、襲いかかってきた聖の剣を受け止めそこねた。足が後ろへとたたらを踏み、更に襲いかかってくる剣を両手に持ち替えたアストレイアでなんとか受け止める。

「おっ、動いた。そうそう、動いた方が楽しいよなぁ」

　楽しそうな神楽と反比例するように、聖の目つきが鋭くなっていく。

「色んなヤツと、色んな遊びをするのも悪かねぇよ。一辺倒な剣なんて面白くねぇ」

　神楽の言うことも尤もだと、シンは聖の剣を受けながら考える。

　父、フェイレイの剣も戦場で培ってきた荒々しい剣だ。道場の中だけで学んだ、型通りのものではない。

　様々な場所での経験があるからこそ、どんな場面でも対応出来る。それは同じことの繰り返しでは決して手に入れられないような気が……。


　ふとそこで、目の前の師匠からユラユラと殺気が立ち上っていることに気づいた。

（ひっ！）

　シンは無意識のうちにアストレイアの柄をギュウギュウと握り締めた。変に力が入った分、師匠の剣が上手く受け止められない。ジリジリと後退を余儀なくされる。

「おー聖、聞いてんのかよ。真面目に毎日修練積むのはいいけどよぉ、それじゃあ堅物で融通の利かない大人になっちまうんだよ。柔軟な対応力っての？　そういうのが剣にも求められるわけよ。今のうちにそういうのを育てておかねぇと、オマエみたいにクソ真面目でつまんねぇヤツになっちまうぞー？　オマエどうすんだよ、李苑に『ウチの聖くん、真面目すぎてつまらないんです』、なんて言われちまったら……」