いつか晴れた日に
「池永さんと片付けながら、少しだけ話を……」

言葉が尻すぼみに小さくなる。
もしかして、全部聞こえてたりしないよね?

わたし達の席から会議室までは距離がある。
声は聞こえても、何を話しているかまでは、ドアの向こうにいない限り……

って、まさか!
ハッとして美香さんを見る。

美香さんは、軽く睨んで「私語は慎んで」と言うと、すぐにパソコンに向かって仕事を始めた。

「……気をつけます」

軽く頭を下げて、その場を後にする。

更衣室に入り誰も居ないことを確かめて、溜め息を吐いた。

……びっくりした。

美香さんにデートに誘われたことがバレたら、どんな意地悪をされるんだろうと思うとゾッとする。
せっかく池永さんに誘ってもらって、浮かれていたのに、水を差された気分だ。

ふと時計を見ると、池永さんが会社を出てから、既に15分が過ぎていた。

「遅くなっちゃった」

ロッカーからバッグを取り出して、軽く化粧を直し、待ち合わせの居酒屋まで急いだ。

地下鉄に乗って二駅目で降りる。それを、商店街の方に歩いていく。
多分、この辺りだと思うんだけど……
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