いつか晴れた日に

のろのろと立ち上がって更衣室をあとにする。

エレベーターを待っていると、後ろから男性の足音が近付いてきた。

「帰ったんじゃなかったの?」

「……ッ!!」

この声は池永さんだ。振り向くのもイヤで、前を向いたまま「……いえ」と短く答える。

資料室で無理矢理、壁に押し付けられたことを思い出して身震いがした。

もう同じ空気を吸いたくない。


チン

甲高い金属音がしてエレベーターの扉が開く。下から上がってきた箱は無人だった。

「乗らないの?」

「非常階段で下ります」

二人きりの密室なんて、絶対にイヤだ。踵を返したところで、「待てよ」と池永さんに手首を掴まれてしまった。

「っ!!」

咄嗟のことで声を上げる間もなく、エレベーターの中に引き摺り込まれてしまう。

「やめっ、」

「あのさ、この前のこと謝ってくれる?」

この人、何を言っているの?
壁に後ずさるわたしを追い詰めるように池永さんが近付いた。

「俺のこと、突き飛ばしただろ?」

「だ、だから、何ですか。あれは、池永さんが無理矢理」

そこまで言って、ハッとした。
池永さんがエレベーターの非常停止ボタンを押したからだ。

「あまり長くは止めていられないけど」

「イヤ、近付かないで!」

「冷たいね」そう言って、池永さんは薄ら笑いを浮かべた。



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