いつか晴れた日に
池永さんがわたしの逃げ道を塞ぐように、ゆらりと一歩踏み出した。

わたしを見詰めて口元に笑みを浮かべる池永さん。
その表情からは、感情が一切読み取れなくて、恐怖で背中にヒヤリと冷たい汗が流れる。

ここは密室。誰も助けてくれない。自分の身は自分で守らなくちゃ。
そう思うけれど、どうしても足が震えてしまう。

「俺が怖いの?」

「ち、近付かないで!」

ヒステリックに叫ぶわたしの頬に池永さんの指が触れる。

気が付けば、わたしは隅に追い詰められていた。

「逃げられると余計に欲しくなるんだよね。大人しく俺のものになっていれば、手荒な真似をせずに済んだのに」

「…………」

この人は、何を言っているの?

唖然とするわたしに、池永さんの手が伸びてきた。
抵抗しようにも力の差は歴然で、わたしはあっさりと押さえ込まれてしまった。

「ちょ、離してくださいっ。こんなことをして、赦されると思っているんですか!か、会社に報告しますよ?それでもいいんですか?」

「どっちの言い分を信じると思う?」

「……え?」

「安西さんと亜紀で俺を取り合ったことになってるんだよね?俺は、安西さんに執拗に迫られたと言うよ?なんなら、安西さんをストーカーに仕立ててしまおうか?」

間近でニヤリと笑う池永さんは、事務所で見るときとは別人のようだった。
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