いつか晴れた日に
「手がかかると言うか、ムカつく女だよね」

そう言って、わたしを無理矢理立たせると、強引に人気の無い非常階段に引き摺っていく。

「やっ、離して」

痛む肩を押さえながら抵抗するけど、完全にブチ切れてしまった池永さんには敵わなかった。
金属の扉を乱暴に開けると、そこにわたしを放り込む。

「騒げばどうなるか、わかってるよね?」

この状況で薄ら笑いを浮かべている池永さんが怖い。

殴られる?
いや、殴られるだけで済むならまだいい。
迫ってくる池永さんを直視出来なくて、ギュッと目を閉じたときだった。


バンッと非常階段の扉が勢いよく開いて、誰かが入ってきた。

「なんだよ、お前」 

池永さんが低い声で怒鳴って、掴みかかったような衣擦れの音がする。
わたしは悲鳴も上げられず、ただ恐怖から頭を抱えているだけだった。

ガツッと何かを殴った鈍い音と短い悲鳴が聞こえて。
次の瞬間、誰かがドサッと倒れこんだ。

荒い息と呻き声が生々しい。

誰も動く気配がなくなって、そこで、漸くわたしは顔を上げることが出来た。

目の前には、倒れこみ呻き声を上げている池永さんと、わたしに背中を向けて仁王立ちしている男の人がいた。


「大丈夫だった?」

そう言って、振り向いた人は黒崎くんだった。

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