いつか晴れた日に
「靴、どうしようか」
黒崎くんが独り言のように、ボソリと呟く。

ロッカーに会社履きのサンダルがあるから、それに履き替えればいい。それを伝えようと口を開いたときだった。

「ちょっと、待ってくれ」

口元を拭って、ゆらりと立ち上がった池永さんに身体が強張った。そんなわたしを庇うように、黒崎くんはわたしを背中に隠す。

「なんだよ?」

「お前じゃなくて、その、安西さんに……」

バツが悪そうに話し出す池永さんを、黒崎くんの背中から少しだけ顔を出して見る。
目が合うと、何とも言えない表情をして目を逸らす池永さんに、もう悪意は感じられなかった。

「あの、悪かったよ。今までのこと。もう二度と安西さんに嫌な思いはさせない。だから、会社には黙っていてもらえないかな……」

そう言って、弱々しく頭を下げる池永さんに、なんて勝手な言い草なんだと腹立たしさが湧いてくる。


だけど、それよりも……。

少しでも反省しているのなら、わたしよりも亜紀に謝罪して欲しい。

ふぅと深呼吸をするように息を吐いた。

「亜紀に本当のことを話して、そして今までのことを謝ってください」

「……わかった」

池永さんの口元には血が滲んでいて、涼が手加減なしで殴ったことを物語っていた。


「それから、わたしにはもう構わないでください」

「ああ、そうするよ」

ホッとしたように、息を吐く池永さんを黒崎くんは苦々しい表情で見ていた。

「安西さん、本当にそれだけでいいの?」

「……うん」

言いたいことは色々あるけれど、もういい。池永さんにはこれ以上、拘りたくない。







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