いつか晴れた日に
それに、池永さんだって、ことの重大さに気が付いているはずだ。
いくらカッとなったとは言え、一部始終が防犯カメラに映っていれば、もう言い逃れは出来ないから。

「今から安西さんを病院に連れて行くけど、治療費と壊れた靴代はアンタに請求させてもらう」

黒崎くんがギロリと睨むと、池永さんは唇を噛んで、それから「ああ、わかった」と絞り出すように答えた。

「アンタな、その態度はなんだよ?」

「黒崎くん、もういいから」

今にも掴みかかりそうな黒崎くんの腕を掴んで、その場を後にする。
壊れた靴をゴミ箱に捨て、ロッカーからサンダルを取り出した。

事務所を通ったときに、美香さんが何か言いたそうにしていたけれど、気が付かないフリをして通り過ぎた。


タクシーに乗って、近くの救急病院に向かう。
診察の結果は、全治1週間の打撲だった。

「大丈夫?」

黒崎くんは心配そうにわたしの顔を覗き込む。

「うん、今は平気」

正直まだ痛みはあるけれど、我慢出来ないほどじゃない。

病院を出て、バス停に向かって歩いていると、黒崎くんが言い難そうに口を開いた。

「……あのさ」

「うん、なに?」

「さっき、俺のこと、名前で呼んだよね?」

……あっ。わたしったら、ついうっかり。

「あ、あの、馴れ馴れしくてごめんね」
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