いつか晴れた日に
 

「実はさ」

わたしの思考を断ち切るように黒崎くんが口を開いた。

「うん」と手を止めて、黒崎くんを見詰める。

黒崎くんは、困ったように目を伏せて、それから言葉を続けた。

「一ヶ月ちょっと前のことなんだけど、俺、交通事故に遭って、一週間昏睡状態だったんだ」

「えっ?身体はもう大丈夫なの?」

「うん。頭を打っただけで、身体はなんともないんだ。ただその前後の記憶が曖昧で。確証がなくて言い出せなかったんだけど、もしかすると、安西さんのことも知ってるかもしれない。

安西さんと話していも初対面の気がしなかったし、『会ったことがありますか?』って訊かれれば、そうなのかなと思った。だけど、説明出来ないことを話してもへんなヤツと思われるだけだって」

「…………」

ということは、黒崎くんが入院していた時期って、涼がわたしと一緒にいたときと重なる。

それって、チビタが黒崎くんの身体を借りて、わたしに逢いに来たってこと?


「安西さん、どうかした?」

「う、ううん」

黒崎さんの視線から逃げるように俯いてお茶に手を伸ばした。

そんなことは有り得ないと自分に言い聞かせながらも、わたしは黒崎くんが涼だったらいいなと期待していた。

わたしが知っている涼には、きっともう逢えないんだ。

ああ、でも。
わかっていても、その望みを捨てきれない。

だって、目の前にいる黒崎くんは涼そのものだから……。

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