いつか晴れた日に
そんなことをぼんやり考えていると、急に『チビタ』と名乗った妙な男のことを思い出した。

日曜日は現れなかったけど、まだ安心は出来ない。
やっぱり、鍵を付け替えた方がいいよね。それって、幾らかかるんだろう?

一万?二万?もっと?

派遣社員にはボーナスは無い。
だから、毎月のお給料で全てをやり繰りしなければならない。

食費を切り詰めて節約生活をしている身には、万単位の出費はかなりの痛手だ。

本当、涙が出そう。はぁ。


「俺と居ても、つまらない?」

その声に驚いて顔を上げると、タバコに火をつけた池永さんが、目を細めてわたしをじっと見ていた。

「そ、そんなことありません」

会社で見ることはない、プライベートな池永さんの表情に心臓がドクンと跳ねた。

「安西さんが溜め息なんて吐くから、退屈なのかと思った」

「違うんです。ちょっと、嫌なことを思い出して」

「何かあったの?俺でよければ話を聞くけど?」

「…………」


池永さんはタバコを灰皿に押し付けて火を消すと、頬杖をついてわたしを見詰める。

「俺には言えない?」

そう言われると、黙っているわけにもいかなくなって。

「いえ、そうじゃなくて。あの、実は……」

戸惑いつつも、この前の出来事を池永さんに話すことにした。
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