いつか晴れた日に
ブルブルと震えていた段ボールの中の黒い子犬。

翌朝、病院に連れて行ったら、案の定風邪をひいていて。
あの時、連れて帰らなかったら、チビタは死んでいたかもしれない。


「……チビタ?」

「うん」

「……そんなの、嘘」

「怜奈ちゃん、どうしたら信じてくれるの?」

犬が人間になるなんて。
そんな御伽噺、信じられるわけがない。


それなのに

チビタとの想い出は、心の中の一番柔らかい場所に深く刻み込まれた大切な宝物だから。

誰にも触れて欲しくない、いや、触れる事が出来ないはずなのに。

この男はいとも簡単に、その場所に忍び込んでくる。

どうして、わたしとチビタしか知らないことを知っているの?
そんな疑問を持ってしまうと、わたしはもうこの男に冷たくすることが難しくなっていた。


「……なんて呼べばいいの?」


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