いつか晴れた日に
『可愛い』なんて、言わないで欲しい。
こういうの、慣れていなくて、どう反応していいのかわからない。
あぁ、ダメだ。まだドキドキしてる。
「それ、食べたら行こうか?」
自分の気持ちを誤魔化すように、池永さんの言葉に黙って頷いた。
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
お店の外でペコリと頭を下げると「どういたしまして」
微笑んだ池永さんが、わたしの頭を撫でるように優しく触れる。
「これから、どうしようか?もう一軒、どこか寄ってく?」
身体を屈めて、わたしの顔を覗き込む池永さんに、また心臓が騒ぎ出してしまう。
「えっと」
どうしよう。涼のことが気になるけれど、もう少し池永さんと一緒にいたい。
「どうする?帰るなら、家まで送っていくけど?」
池永さんはわたしを安心させるように微笑んでいる。
やっぱり、帰りたくない。涼、ごめんね。そう心の中で呟いて。
「……一杯だけ、何処かで飲み直しませんか?」
小さな声でそう言うと、池永さんはわたしの右手を取って歩き出した。
繋いでいる右手に意識が集中してしまう。
これは、どういうことなんだろう?
池永さんは黙ったまま、足早に歩いていく。必然的に引っ張られるように、ついて行くわたし。
「あの、池永さん何処に行くんですか?」
「いいから、黙ってついてきて」
そう言って、路地を人気の無い方へ進んでいく池永さんに少しずつ不安が募っていく。