いつか晴れた日に
路地を抜けて視界に飛び込んできたのは、目にも鮮やかな電飾が輝くラブホテル街だった。

もしかしたら、と思っていたけど、やっぱり。

「池永さんっ、手を離して下さいっ」

「うん?」

「わたし、そんなつもりじゃありませんから」

繋いでいる手を強引に振り払って睨みつけると、池永さんは「ああ」と困ったように頭を掻いた。

「安西さん、何か誤解してないかな?俺が行きたいのは、そっちじゃなくて……」

「え?」

池永さんの指差す方に視線を向けると……

ラブホテル街の手前に木製のバーの看板があった。

「こっちのバーだよ」

「あ、あの、わたしてっきり……」

「もしかして、こっちだと思った?俺は別にそっちでもいいけど?」

悪戯っぽい笑みを浮かべながら、池永さんは試すようにわたしを見詰めた。


「いえ、あの、バーです。バーに行きましょう」
頭をブンブンと振って、今度はわたしが池永さんの手を取って、バーに向かって歩いていく。

は、恥ずかしい。わたしってば、何を勘違いしてるのよ。

穴があったら入りたい。
……わたしのバカバカバカ。


「アハハ」
バーのテーブル席につくなり、池永さんが声を出して笑いだした。

「そんなに、笑わなくてもいいじゃないですか」
バツが悪くて俯くわたしに、笑いながら池永さんが続ける。

「ごめん、ごめん。でもさー、俺ってホテルに直ぐ連れ込むような男だと思われてるんだね、うん。勉強になったというか、傷ついたというか」

「ごめんなさい。そんなわけじゃないんですけど、池永さんが、何も言わないから」

「あぁ、それもそうだ。不安にさせて、悪かったよ」



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