いつか晴れた日に
タクシーがわたしのアパートの前に止まる。
池永さんがお金を払い、わたしの手を引いてタクシーを降りた。

「怜奈の部屋に行ってもいい?」

「……え」

驚いて顔を上げると、池永さんの顔が近付いて、返事をする間もなく唇を塞がれてしまった。

「池永さっ、ん」

胸をそっと押すと、逆に腰を引き寄せられて身体がより密着してしまう。
池永さんの舌がわたしの唇を押し開いて、濃密な大人のキスを与えられる。
呼吸がままならなくて、息が苦しい。

ダメだ。これ以上は……

そう思うのに抵抗できない。理性が溶かされていく。


「怜奈、可愛い」

よくやく唇を離されて、落とされた甘い言葉に眩暈がしそうだった。

「そんな、色っぽい顔もするんだね」

……待って。もう、止めて。


「怜奈、いい?」

「……なんです」

「ん?なに?」

池永さんの指がわたしの頬を優しく撫でる。その指が首筋からゆっくりと降りていく。

ダメ。
部屋には涼がわたしの帰りを待っているのに。
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