いつか晴れた日に
「本当に、今日はダメ、なんです」

わたしの言葉を黙って聞いていた池永さんは、小さく溜め息を吐いた。

「そっか、ダメな日、なんだ?」

「……はい」

池永さんは意味を取り違えたみたい。
だけど、わたしはその勘違いを利用することにした。

「ごめんなさい」

「じゃ、また今度、ゆっくり食事に行こうね」

「はい」

「おやすみ」

「おやすみ、なさい」

唇に軽くキスをして、池永さんは帰っていった。

池永さんと、キスしてしまった。

嬉しいのに、うしろめたい気持ちになるのは、池永さんに彼女がいるからだ。


ううん。それだけじゃないと本当はわかってる。

早く、部屋に帰らなきゃ。重たい気分でドアを開けた。

「ただいま」

明りが点いた部屋のテーブルには、手が付けられていない料理とうたた寝している涼の姿があった。

やっぱり、食べずに待っていたんだ。
涼、ごめんね。
心の中で呟いて、起こさないように、そっと涼の横を通り過ぎる。

荷物を床に置くと、気配を感じたのか、涼は眠そうに目を擦りながら顔を上げた。

「ん?……怜奈ちゃん?」

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