いつか晴れた日に
お財布を手に事務所を出る。
エレベーターを待っていると、営業さんに「安西さん」と声を掛けられた。

池永さんと同じ課の主任だ。

「はい?」

主任がわたしに何の用だろう?

「下に行くならさ、一階の喫煙所に池永が居ると思うから、直ぐに上がってくるように伝えてくれないかな」

なんだ。そういうことか。「わかりました」そう返事をすると「悪いね」と言って、主任はバタバタと事務所に戻っていった。

何か急ぎの用件でもあるのかな?そんなことを考えながら、エレベーターに乗り込んだ。

言われた通り、池永さんは一階の喫煙所で携帯を手にタバコを吸っていた。
喫煙所には、あと一人別の課の営業さんも居た。

ガラス張りの喫煙スペースに向かって歩いていく。
二人ともわたしに背を向けていて、近付くわたしに気付いていないようだった。


池永さんの電話が終わると、営業さんが「お前なー」と笑いながら池永さんの背中を叩いた。

「いやいや」

池永さんも笑いながら、軽く小突き返す。

そんな楽しそうな二人の様子を気にも留めずに近付いた。
そして、喫煙スペースのドアノブを掴んだときだった。

「爽やかな顔して、お前最低だな。結婚決まったんだろ?派遣の子に手ぇ出してどうすんだよ?」

……え?
池永さん、結婚決まったの?

思い掛けない言葉に、ドアノブを持つ手が固まった。

だけど、もっとショックだったのは、池永さんが次に放った一言だった。


「遊ぶなら、今しかないでしょ?」





< 83 / 159 >

この作品をシェア

pagetop