1番目の小夜子
そんな私にとって、小夜子というドラマとの出会いは衝撃的なものでした。

私の学校に小夜子というゲームがあったらどんなにおもしろいだろうか。
私が1番目の小夜子になろう。

小夜子は私。
私は小夜子。

なんとなく、そんな妄想をしながら生きてきました。

何度も小夜子をやろうとしました。
『始業式の朝に赤い花を活けよ』
簡単な作業のように思うでしょう?
だが小学生の私には難しすぎる話でした。
まず、赤い花を買うお金なんてないし、活けるには花瓶も必要でした。
それにみんなに見られないように赤い花を活けるには朝早く学校に忍び込まなければなりません。
先生に見つかってしまうのは怖かったのです。

けっきょく始業式の朝、私は折り紙で赤いチューリップを折りました。
そして先生にかわいい無邪気な子供の笑顔を作り『せんせーっ!おりがみきれいにおれたから、きょーしつにかざってよ』とかわいい声で言いました。

かわいい小夜子でしょう?
今おもうと幼稚な小夜子。

小学生のくせして先生に無邪気なふりをするところは我ながら子供の頃からかわいくないなって思いますが。

いま思うと幼稚な未完成な小夜子ですがあの時の私は達成感でいっぱいでした。

ついにやりとげた。
小夜子が始まる。
私が小夜子。
小夜子は私。

次の義務は…
『文化祭で小夜子というお芝居をやる』

…小学校には文化祭というものはありません。
私は小夜子をあきらめざるおえませんでした。
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