Ri.Night Ⅲ
────…
「──もしもし」
化粧が終盤に差し掛かってきた頃、貴兄の着信音がリビングに鳴り響いた。
その着信音を待ってましたと言わんばかりに顔を上げる。
けど、直ぐ様鏡へと視線を戻した。
「──あぁ。分かった。すぐ行く」
気にもとめていないとでもいう様に平然と化粧を続けながらもしっかりと聞き耳を立てるあたし。
どうやら出発の時間らしい。
「凛音、先に出るから戸締まりよろしくな」
「うん、分かった」
通りすぎ様にそう言いながらポンッと頭に手を置かれ、チークをクルクルと塗りながらそれに応える。
「いってらっしゃーい」と軽く手を振ると、貴兄と優音はそれを見て小さく笑い、手を振り返してくれた。
姿が見えなくなるまで振り続け、玄関の閉まる音が聞こえるまで化粧をする。
パタンと音が聞こえた瞬間、マスカラの蓋を閉め、散らばっている化粧品を急いでポーチに入れて出発の準備開始。
ポーチをテーブルの上に置いたまま素早く立ち上がると、あらかじめ用意しておいた家の鍵をポケットから取り出して玄関へと向かった。