鏡花水月◌˳⚛˚
「そんなこと言うわけねえだろ。入学してまだスクールカーストさえ出来てない時期にそんな噂流しても俺が悪く見られるだけだろ。つか、修央館入ったらそんな暇ねえよ。み、皆勉強で忙しいだろ…。」
「…そ。」
この日の今村紺は、口調や当たりが優しかった。いつもなら『喋んなブス』とか『死ねゴミ』とか、平気で皆の前で言うくらいだから、余程デリカシーと繊細さの無い奴だと思っていたのに。
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迎えた入試当日。あの日の記憶が蘇る。でも、あの日の私とは違う。何にも負けず、勉強だけに力を注いだ。今朝、母と約2年振りの会話をした。頑張ってくるね、と。母はいつも私へ一方的に『お受験頑張りましょう。ね?』と喋りかけてくるような厚かましい目ではなかった。ドラマや漫画で見る母親の様な優しい目で『いってらっしゃい』と送り出してくれた。