sinner
ベランダの仕切りの向こう側で、お隣のお兄さんは、わたしが買ってきたデパートの紙袋を掲げていた。
「これだけじゃない。荷物、全部忘れていったよ」
仕方ないけどね。そう、最後に小さく付け加えて。
「すみませんでした。全部運んでもらっちゃって。べつに、放置してくれても良かったのに」
「できるわけないでしょ。――大事ものばかりなんじゃないの?」
「え?」
お隣のお兄さんは勝手に推理してくれていた。
「見えちゃったから。大きなケーキやオードブル。靴とかも。それ、普段から常連でいられるような店のものじゃないよね」
「あっ……」
そういうの、気づける人なんだな。そして、さらりと言えちゃう人。
「パーティーとかの準備だったら捨て置けないでしょ。お祝い事は大切です」
毎朝毎晩花の手入れをするこの人の指先はあかぎれだらけで、時折交わす会話は自立と清潔さも滲み出ていた。軟派な外見とは違う内側も感じとってしまっていたわたしは、
「…………、へへっ、実は誕生日、だったのですよ~」
おどけた感じで漏らした本当のことと一緒に、涙を流してしまっていた。
とめどなく。とまらなく。