sinner
「べつに、誕生日だから一緒にいたいとか、そんなのはなくて」
「――うん」
「残業でもそんなのどうでもいいんです」
「うん」
「これはただ、当てつけでも何でもなくわたしの趣味で」
それらは確かに本心だった。けど負け惜しみみたいでもっと悲しい。
わたしは、まだひとつしか受け取っていない紙袋を握りしめた。
「――うん」
……いや。そんなことじゃないんだ。
どうでもいいなんて言ってはいけなかった。
それじゃあ、駄目だったんだ。
「……一緒に、暮らしているだけになってしまってたんですね」
独りごちるのと変わらない声を、ベランダの柵越しに受け止められる。
「残業がどうとか以前に、わたしは、彼のことを気にしなくちゃいけないところまで……どうでもよくなってたんです」
わたしがそうなったから彼が誰かと恋をしたのか、彼もそうだったからこうなったのかも、まだわたしにはわからないけど。
「なのに、傷つくことだけは一人前にして……」
彼に対する感情が以前とは違うものへと変わっているというのに、わたしは、彼に裏切られたと泣いたのだ。