sinner
――――……
わたしが眠ってしまったと思ったお兄さんは、シーツ一枚隔てた隣でわたしの髪を撫でながら、謝罪の言葉を口にした。直でない体温が寂しいなんて思ってしまいながら、寝たふりをしたわたしは、布一枚を乗り越えることはしなかった。
「……ごめんね。偶然とある駅で別の女と一緒の彼を見つけて。君の姿も見つけて、彼が追いつくように誘導した。君にいたずらを仕掛けた。君たちがどんな状態なのか、この目で確かめたかったんだ」
腹は、立たなかった。立つわけがない。
「けど、まさかあんなタイミングで電話があるなんてね。……それを嬉しく思ったぼくを、君はどう思うかな」
そっと、おでこにキスをされた。
「飲むものでも買ってくるよ。生憎部屋には今何もなくて」
そうして、お兄さんは服を着込み、何処かへ出掛けてしまった。
少しの間だけ、わたしはシーツの端を握りしめ行為の余韻に浸る。人生の中で、今日のこれがきっと、わたしが一番大切にされたに違いないと、言ってしまってもいいような抱かれた。
そうして、一ヶ所にまとめてくれてある服を身につけた。
気持ちは確かに晴れていた。
確かに、わたしは縋って癒されたのだ。
お兄さんは、わたしが起きているのに本当は気づいていたのかな。気をきかせて出ていってくれたのかもしれない。
取り残された部屋の中は、余計なものが何もない、整理整頓が習慣づけられているような一見冷たい雰囲気を感じさせるけど、所々に置いてあるグリーンの植物たちが温もりを与えてくれる部屋だった。
好きだと、一度だけ囁かれた。わたしが怯むと、もう何も言わなかった。でも、宝物を扱うように、最後まで触れてくれた。
ありがとう。
ごめんなさい。