sinner
これきりだと、言われずとも肌に直接叩き込まれた。それでもいいとしていたのに、いざこうも、その意思が痛いほど理解出来てしまうのは辛かった。
ここでの、同じアパートのお隣さんという繋がり。そこを絶ってしまえばそれが成立するんだとしか認識していない彼女に腹が立った。
ぼくのことなど所詮その程度だったと……わかってはいたけど寂しかった。
ぼくは、もっと知っているのに。
こんなにも好きなのに。
女々しくてしょうがない。だから遠ざけられるのかもしれないけど。
気持ちを理解されていて、遠ざけられるのかもしれないけど。
振られることから逃げたくせに、結局それは現実となってしまった。
「うん。――元気でね」
吹っ切れた彼女を、作った笑顔でぼくは見送ることしか出来なかった。
その夜、まだ同居人は少しの間住むらしい隣の部屋の音を聞きたくなくて、ぼくは一晩中、ここじゃない騒がしい街中に身を委ねた。
「――あれ? 店長、今日は早いですね」
「おはよう。ちょっと終わってない仕事があったから」
早番の子が店のシャッターを開けると、中にぼくが居たものだから驚いていた。こちらはこちらで、もうそんな時間なのかと時計を見やる。
ぼくが勤めるフラワーショップはオフィス街の近くにあって、開け放たれて朝日が降り注ぐ店先の歩道は歩く人もまだ多くない。もう少ししたら地下鉄の通勤ラッシュから解き放たれた人達が増えてくる。
一晩中眠れなかった身体が悲鳴を上げたけど、知らないふりをした。